なでしこブログ

2011年04月24日

【女子チームのつくりかた】広島皆実高等学校

 「広島皆実高校女子サッカー部」の顧問を務める
應本哲夫さんに話を聞きました!
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●チームを立ち上げの経緯を教えてください。
女子サッカー部が作られたのは1985年の4月、今年で27年目を迎えます。創設されたのは森田一雄先生です。森田先生は皆実高校に赴任する前年に廿日市高校で女子サッカーの同好会をスタートさせ、その廿日市高校に対戦相手がいないということで皆実高校でも同好会のようなものを作ったというのが最初と聞いています。

●どのような流れで同好会から部活動へ移行していったのでしょうか?

 通常は生徒からの要求の声があってスタートするのかもしれませんが、女子サッカー部は森田先生が自ら動かれ、その意欲から始まっています。最初は3人の生徒がサッカーを始めてくれたらしいのですが、到底人数は足りません。そのため、本校の生徒だけでなく社会人を含めたりして、いろんな年代の人に入ってもらって試合をしていたそうです。
そして指導して3年目に地域大会で優勝し、全国大会に行くことになりました。ところがここで「これはマズイことになった」となったそうです(笑)。なぜかというと、この同好会的な活動を学校には正式に届け出ていなかったそうなんですよ。今では考えられないことですが、当時はなんとなく出来てしまっていたんでしょうね。でも全国大会へ行くということでバレてしまった。当然「何をやってるんだ!」という話になり、壮行式のようなものもやらずに・・・ということだったんですが、当時の教頭が「せっかくがんばったんだからいいじゃないか」と、その一言で部活動として正式にやりましょうと発展していったそうです。
その後、森田先生が異動になり、奥村優之先生にバトンが渡されました。2006年から私が赴任し、他の先生とも協力をしながら顧問を務めています。


●現在、一番苦労しているのはどういったところでしょうか?

 やはり指導者の確保ですね。奥村先生はご自分で指導経験がありましたが、私はサッカーの経験はありません。週末に試合などの引率も他の先生たちと交代で担当している状況です。きちんとトレーニングを見てくれる指導者が必要でした。
ちょうど困っていた時にコーチをさせてほしいと声をかけてくれた方もいました。男子部員の中に女子サッカー部に指導者がいないことに気付いた生徒がいて、子供の頃に指導を受けていたコーチに相談し、学校に話に来てくれたんです。そのコーチはさらに上のレベルで指導してみたいと別のチームに誘われて離れるまで、約2年間指導をしていただきました。
その後、無理を言って引き継いでくれたのが、今指導してくれている戸根徹典コーチです。2008年から週2回程度トレーニングを見てもらっています。彼は広島県の女子U-15の技術委員で、うちの他にもご自分のチームの監督をされています。ですから、非常に多忙なスケジュールの合間を縫って来てもらっている訳です。指導経験も長く、指導法もしっかりされているので、生徒たちは心から信頼しているようです。指導にしっかりついていけるように、戸根コーチが来ることができない日も真面目にトレーニングに励んでいて、その努力には本当に感心します。


●メンバーが集まらなくて困ったということはないですか?
それが創部から常に15,6名は部員を確保できていて、足りなくて困るということはなかったそうですし、それは今も変わりません。なぜかはよくわからないんですが、もともと広島という土地は男子ではマツダとか広島大付属とか強豪チームがあり、サッカーがさかんな地域でもあります。お父さんがサッカーをやっているということも多く、女子生徒たちもボールに対して親近感があるのかもしれません。
皆実高校の7割近くが女子生徒で、さらに部活動の加入率は文化部も含めて8割近い数字があります。皆実高校を選んでくる生徒は基本的に、何事にも勤勉に努力するタイプが多いと思います。こういったことも起因しているのかもしれません。

●グラウンドの確保についてはどうですか?

 昔の話では男子が今ほど強くなかったので半々で使用できたらしいのですが、今はフルコートの3分の1程度のスペースでやっています。男子が遠征などでいないときはフルコートを使用できます。広島市内ではグラウンドを押さえることが難しく、対外試合などが組めればいいんですが、男子の方でも突如試合が入ったりするので、スケジュールが組みにくい部分はあります。幅広くコミュニケーションを図って、カバーしていかないといけないですね。

●対外試合の相手は?
これはみなさん抱えている問題だと思いますが、探すことは簡単ではないです。3・4月は機会が少なくなりますが、それでも大会以外に月に一回程度は対外試合を組んでいます。広い範囲で遠征などに行ければいのですが、経費的にもそれは難しい。また、こちらの事情となりますが、サッカーの経験者が引率ができない場合、レフェリーなど互いに分担するところを相手チームにお願いしなければいけなかったりすることもあります。そういったこともあって、ここ数年、遠征はないですね。生徒たちも実戦の場を欲していて、「どこか対戦できるところへ連れて行ってほしい」という言葉を聞きます。苦しいところです。
ただ、本校の目の前にある女子高校が、昨年女子サッカー部を立ち上げたんです。お互い協力できることも多い。これまでにテストマッチも2度程行っています。これからもいろんな形で切磋琢磨していければと思っています。

●これから、どのように成長していってほしいと思いますか?
コーチが来てくれるトレーニングの日はやはり目の色が違います。いくら自分たちで頑張っていても、生徒たちだけではやはり限界がある。日々のモチベーションが保てるようになったら、もっといいチームになるはず。苦しい状況下だからこそ、いろいろ感じられるような人間になってほしいと思います。


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 <チームトレーニングレポート>
広島皆実高校女子サッカー部のトレーニングは月曜から金曜の放課後、そして週末はゲームか午前中にトレーニングと、ほぼ毎日行われています。しかし、サッカー経験者はほんのわずか。部員のほとんどが高校からサッカーを始めたといいます。
技術も経験もバラバラなチームをまとめているのが、キャプテンの川崎玲奈さん。彼女自身は小学3年生からサッカーを始め、中学校では男子チームに交じってサッカーを続けてきました。トレーニングでは、指示はすべて川崎さんから出されます。

 「自分が中学のときは周りに遠慮をして聞けなかったから、後輩には教えてあげられるようになりたいと思っていました。自分は経験者ですし、そういうところは意識してます。一人一人のレベルアップがチーム全体の向上につながると思うし、みんなも疑問点なんかを聞いてきてくれるんです」(川崎さん)。
時には優しく、時には厳しいことも伝えなければならないという難しい立場ですが、「苦手なことがあった方が、自分が成長できると思います」と日々その役割を精一杯こなしています。

 通常は、選手たちだけでトレーニングを行いますが、週に2度、戸根徹典コーチが指導にきてくれます。この日は戸根コーチが来てくれる貴重な日でした。17時過ぎから始まったトレーニングに参加していたのは19名。ダッシュを含んだウォーミングアップを行い、対面3グループずつに分かれてのパス交換が始まります。そこから1対1へ展開。時折、戸根コーチがプレーを止め、自ら実践で示す場面もありました。男子と共用で使用するグランド。女子が使えるスペースはおよそ3分の1です。そこへみんなでゴールを運び、2対1の対人プレー。さらに、状況に応じた自分たちの判断で2対2への移行も可能という変則ルールで進行していきます。徐々にプレーする人数を増やしていき、最後は使用できる最大のスペースを利用して9対9でのミニゲームでこの日のトレーニングは終了しました。

 ピッチで驚いたのは3人のマネージャーの存在。ドリンクやビブスなど、選手たちに必要なものをピッチの傍らで準備をしていました。通常は戸根コーチのトレーニング内容をノートにメモし、次に戸根コーチが来るまでの選手トレーニングの参考にするのだそうです。寒空の下、ベンチコートに身をつつみながらサポートをしていました。

こうしたみんなの努力を戸根コーチはひしひしと感じるといいます。
「僕が言ったことや課題を消化しようと日々励んでいることは次に行ったときの彼女たちのプレーを見ればわかります。ただ、初心者の選手が多いということからか、プレーを諦めてしまう瞬間がある。プレスにしてもギリギリまで激しく行けばボールを奪うことができるはずなのに行かないとか。やれるはずなのにやる前に自分には無理だろうと諦めてしまってるんです。そこは意識の問題だけだと思いますね」(戸根コーチ)。

技術にバラつきがあるため、メニュー作りも難しいはずです。それでも、「最初はどうしてもレベル差があるので全体的にブレーキがかかってしまいますが、それでも一緒にプレーしないと上手くはならないですよね。経験なく入部しても2年生とコンビネーションを組ませたり、グループ分けをすることなくやっています。引き上げるためには必要なこと。時間はかかりますが、相乗効果はあると思います」と戸根コーチは言います。

また、相乗効果はこれだけではありません。戸根コーチが通常指導しているのはU-15の女子チーム。全国大会へも出場する強豪チームです。都合が合えば、広島皆実高校とも合同トレーニングを行うことがあります。ここでは、技術ではU-15チームの方が上。そこで広島皆実高校の選手たちは学ぶところがあり、U-15の選手たちは身近にいるお姉さんたちからいろんなことも見聞きして感じるとこがあるそうです。こうした垣根を越えた交流も貴重な経験となるのだと戸根コーチは話してくれました。

 サッカー経験なく、新たに高校からスタートを切るのはやはり勇気が必要です。岡本かりんさんもそんな一人。中学時代は陸上部に所属していました。小さい頃に蹴ったサッカーボール、小学校でもよく遊んでいたというサッカーに高校で挑戦しようと決意しました。
「シュートが入ったときやプレーをホメられた時はやっぱりうれしいです! 大学でもサッカーは続けたいと思ってるんです」とは岡本さん。同じ思いを持つ仲間ができるのも部活動ならではの醍醐味です。

そんな広島皆実高校の目標は「広島県で3位になること!」。その目標を形にする大会は5、6月に行われる県総体です。この大会で新3年生は引退です。この仲間でボールを追えるのもあとわずか。残りわずかな時間を惜しむように、そしてみんなで決めた目標へ向かってトレーニングに取り組んでいた広島皆実高校女子サッカー部のみなさんでした。

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